2013年9月29日日曜日

天まで届け!~交通事故をなくそう~


私は買い物をしながら、ビッグ・バザールの中を歩き回っていた。
そして、レジ係が、せいぜい5,6歳の小さな男の子と話しているのに気づいた。

「悪いね、坊や。でもこのお人形を買うにはお金が足りないんだよ」レジ係が言った。
「本当にお金が足りないの?」小さな男の子は私に向かってたずねた。

私は男の子の持っているお金を数えて言った。
「ほら、お人形を買うにはお金が足りないだろう、坊や」

男の子はまだ人形を手に抱えていた。
「そのお人形、誰にあげるんだい?」私は男の子に近づき、とうとうたずねた。

「このお人形はね、ボクの妹が大好きですごく欲しがってたんだ。妹の誕生日にあげたかったんだ。だからママに渡して、ママがそこに行くときに、妹に渡してもらわなくちゃならないんだ」
 
そう言った男の子の目はとても悲しげだった。

「妹はね、神様のところに行ったんだ。パパがね、ママも、もうすぐ神様に会いに行くって言ってるんだ。だから、妹に渡してもらえるように、ママにお人形を持って行ってもらおうと思って」

私は心臓が止まりそうになった。

小さな男の子は私を見上げ、「ボクね、パパに『まだ行かないで』ってママに頼んでって言ったんだ。僕がモールから戻ってくるまで待っていてって」

それから、笑っている自分の写真を取り出して、「ママにね、ボクの写真も持っていってもらうんだ、妹がボクのこと忘れないように。ボクはママが大好きだから行って欲しくないけど、ママは小さい妹と一緒にいなくちゃならないって、パパが言うんだ」

そして、だまって悲しそうに人形を見つめた。

私はすばやく財布に手を伸ばして言った。
「もう一回かぞえてみようか、ひょっとして足りるかもしれないよ」
「オーケー。足りるといいけど」

私は男の子に見られないように、こっそり自分のお金を足して一緒にかぞえた。お人形を買ってもおつりがくるくらいのお金があった。

「神様、ボクにお金をくださってどうもありがとう」

それから私を見て、「昨日の夜寝る前に、神様にお祈りしたんだ。ママが妹に渡せるように、お人形を買うのに十分なお金をくださいって。ねぇ、ちゃんと聞いてくれたんだ!」

「本当はママに白いバラを買ってあげるお金も欲しかったんだけど、そこまでお願いできなかったんだ。でもね、神様はお人形と白いバラを買えるお金をくれたんだ。ママはね、白いバラが大好きなんだ」

私はやって来た時とは全く違った気分で買い物を終えた。

この男の子のことが私の頭から離れなかった。そう言えば、2日前に地方紙に、酔ったトラックの運転手が若い母親と小さな女の子の乗っていた車に衝突した、という記事が載っていたのを思い出した。

小さな女の子は即死だった。若い母親は危篤だった。もう、こん睡状態から回復する見込みはないので、家族は、生命維持装置をはずすかどうか決断しなければならないということだった。

それは、この男の子の家族のことだったのだろうか?

その小さな男の子に出会った2日後に、新聞でこの若い母親が亡くなったという記事を読んだ。私は自分を抑えきれずに、白いバラの花束を買い、若い母親の葬式会場へと足を運んだ。埋葬前の最後のお別れをのために、棺が開けられていた。

そこに若い母親が横たわっていた。一輪の白い美しいバラを手に握り、あの小さな男の子の写真と、あの時に買った人形が胸の上に置かれていた。

私は涙を浮かべながら会場を後にした。自分の人生がすっかり変わってしまったような気がした。

あの小さな男の子がどれほど母親と妹を愛していたかは、今でも想像に難くない。でもほんの一瞬のうちに、酔っ払い運転が全てを奪ってしまったのだ!

 
オリジナルへのリンク↓
http://peacefrompieces.blogspot.com/2011/01/reaching-out.html

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