2014年4月27日日曜日

あと5分


ある日公園で、女性が、遊具場のそばのベンチに座っている男性の隣に腰を下ろした。

「あそこにいるのが私の息子なんですよ」
女性は赤いセーターを着て、滑り台を滑っている小さな男の子を指さして言った。

「かわいい男の子ですね。あそこで、白いワンピースを着て自転車に乗っているのが、私の娘です」
男性は答えた。

それから腕時計を見ると、
「もうそろそろ行かないか、メリッサ?」
と娘に呼びかけた。

「あと5分。パパお願い、あと5分だけ」
メリッサは、ねだった。

男性はうなずき、メリッサは心行くまで自転車に乗って楽しんだ。
5分経ち、父親は立ち上がって娘に再び呼びかけた。
「もう行く時間だよ?」

「あと5分、パパ。あと5分だけ」
メリッサは再びねだった。

「わかったよ」
男性は微笑んで言った。

「あらまあ、すごくやさしいお父さんですね」
その光景を見た女性が言った。

男性は微笑んで言った。
「あの娘の兄のトミーは、去年、この近くで自転車で遊んでいた時に、酔っ払いにはねられて亡くなりました。私はトミーとはあまり一緒の時間を過ごせなかったのです。もし今、あと5分トミーと一緒にいられるなら何でもします。だから、メリッサには同じ過ちを繰り返さないと誓ったんです。」

「メリッサは、あと5分自転車に乗っていられると思っているでしょう。でも本当は、私があと5分、娘が遊んでいる姿を見ていられるのです」
 

オリジナルへのリンク↓
http://peacefrompieces.blogspot.com/2010/09/5-more-minutes.html

2014年4月20日日曜日

決して、自分の価値が失われることはない


ある著名なスピーカーが、セミナーの最初に20ドル札をパッと開いた。
そして、
「この紙切れは何でしょう?何の価値がありますか?」
と会場に集まった200人ほどの参加者に尋ねた。

「それは20ドル札で、国内でも海外でも、その額の現金として使える、とか?」
手を挙げた大勢の参加者のうち、一人がそう答えた。

次にスピーカーは、その20ドル札を両手を使ってクシャクシャに丸めた。20ドル札は一握りのしわくちゃの紙になった。それから、そのしわくちゃになった紙をもう一度開いたものの、きれいに整えることはできなかった。

「まだ20ドル札として使えるでしょうか?」
スピーカーが尋ねた。

「使えます!」参加者は口々に答えた。

「どうもやり方が甘かったようですね。じゃあこれではどうでしょう?」

スピーカーは、20ドル札を落として、靴で床に踏みつけた。それから拾い上げたが、今やすっかり汚れてクシャクシャで、見た目がひどくなっていた。よく見ないと20ドル札だとは分からないほどだ。

「さて皆さん、どなたか20ドル札として受け取りますか?」
この質問に、多くの参加者が手を上げた。

「私は、その紙幣は、まだ20ドル札として通用すると思いますが…。」
一人の参加者が、あまり自信無さそうに答えた。

「まだその紙幣で、20ドル分の買い物ができますよ!」
他の参加者が答えた。そして、その意見にみんなが同意した。

「皆さん、今までご一緒に考えた質問にはとっても貴重な教訓が含まれています。きっと、皆さんの中には、私が20ドル札をクシャクシャにして、汚して、キズをつけたと思われた方もいらっしゃるでしょう。ご覧のとおりでしたから」

「でも、私が20ドル札に何をしようと、皆さんは、まだ20ドル札として使えると言い続けました。なぜなら、私のしたことが20ドル札の価値を本当に減らすものではないと、心の中で思っていたからです。20ドル札は、20ドルの価値があるお金のままだったわけです」

「ところで皆さん、私たちの人生においてもたくさん、自分の判断や時の巡り合わせによって、落ち目になったり、ペチャンコになったり、地べたで泥まみれになっているような気持ちになることがあります。そして、まるで自分が価値のない人間のように感じるものです。さらに傍から見れば、ある程度、それが実際に起こっている事のように見受けられるかもしれません」
 
「でも、これまでに何が起こったとしても、これから何が起こるとしても、どうか覚えておいてください、あなたの『価値』が失われることは絶対にあり得ないのです」

 
オリジナルへのリンク
http://peacefrompieces.blogspot.com/2011/02/you-never-lose-your-value.html